「ブドウの発生1」の続き。前回の話も参考にしてください。
今回はどうやってアメリカ系ブドウとヨーロッパ系ブドウが分かれたかというお話。
新生代第三紀の初頭、始新生の頃(約4000万年前)の地球は上の図の左のように、アメリカ大陸とヨーロッパ大陸が陸続きでありました。この頃は、今でいうところの赤道が北極よりにあり、生物は主に北半球で栄えていました。
そして、新生代第四紀の後半にいたるまで幾度かの氷河を経験します。そしてこの氷河の形成が多くの動物や植物が南に移動するきっかけとなったのです。生物の移動はアメリカ大陸とユーラシア大陸で異なっていました。つまり、それぞれの大陸で山脈に沿って生物は移動したために、アメリカ大陸では、北から南に、ユーラシア大陸ではアルプス山脈が進路を妨げていたので、生物は西に東にと移動していきました。
ところで、アメリカ系のブドウとヨーロッパ系のブドウが現在のようにわかれているカラクリは以下の通り。まずはじめに、大陸が以前は陸つづきであったために、様々なブドウの種類が混在していました。大陸が分断されても初めの頃はおそらくはバリエーションに変化はなかったかもしれませんが、アメリカ大陸とユーラシア大陸、それぞれの環境の違いにより、ブドウの種類に変化が生まれてくるようになったのです。
北アメリカ起源の多くのブドウ病害菌が交通手段の発達により19世紀頃に世界中に伝播したことで有名ですが、アメリカ大陸は病害菌がもともと多い環境であった。そのため、病害菌に弱いブドウの系統は早々に滅びてしまった。一方、ユーラシア大陸では、アルプス山脈が現在のヨーロッパ付近の氷河の融解を長期間にわたり妨げたので、その間に寒さに弱い植物や動物は滅びてしまったそうです。温かい気候に適していたアメリカ系のブドウはこの時に滅びてしまったのです。つまり寒さに強い生物だけが、ユーラシア大陸に広がっていったのです。
こうして現在のように、アメリカ系のブドウとヨーロッパ系(アジア系)のブドウが分かれるようになったそうです。