ダンゴムシを平たくして小さくしたのがワラジムシ、ワラジムシをさらにひとまわり小さくしたのがカイガラムシ。「カイガラムシ」と聞くと決まって連想するのがこの流れだった(下図)。
カイガラムシは、子供の頃、図鑑かなにかで見たことがあるだけで、その形や大きさからこのように覚えていた。今となってみると、印象的には遠からず近からずで、我ながらなかなかの連想であったと感心してしまうのだが、先日、ついに、ブドウ畑で実物のカイガラムシを見つけた。今日はそんなカイガラムシのお話。
ネットで調べてみるとカイガラムシは、
カメムシ目(
半翅目)の仲間であった(1)。この点において、ワラジムシ目であるダンゴムシとワラジムシとは分類が異なる(2,3)。カメムシ目には、大まかに、以前紹介したチャバネアオカメムシ(2006年8月2日)をはじめとして、セミ、アブラムシなどが含まれている。これらの虫たちは、蛹のステージがなく、幼虫が数回脱皮することで成虫になる
不完全変態の昆虫である。しかし、カイガラムシでは、雄が擬蛹(ぎよう)という蛹のようなステージを経るタイプもいるようだ(1,4)。
カイガラムシは約400種以上存在することが知られているのだが、面白いのは、その形態の多様性である(4)。白い粉をまとうものや、蝋でおおわれているもの、貝のように硬く移動性のないもの、外側の硬い介殻がなく裸でいるもの、と実に変化に富んでいる(上図)。これらの多種多様な外観を構成する物質は、カイガラムシの余った栄養分と排泄物であり、虫体被覆物と呼ばれている(1)。
上の図は、ブドウ畑で発見したカイガラムシで、
クワコナカイガラムシ(
Pseudococcus comstocki)の雌成虫である。名前からわかるように、こいつは粉タイプのカイガラムシ。クワコナカイガラムシは、ブドウ、ナシ、カキ、カンキツ類に寄生し、果実や葉、梢や果梗にたかり、吸汁します。吸汁により植物の生育に悪影響を与え、さらに、上図の右側の突起物から出る分泌物は(ちなみに頭は左側)、
すす病菌の養分になり、クワコナカイガラムシの寄生部分には、文字通りすすのような黒い斑点ができてしまいます。実際、こいつを捕まえるのにあたって、ブドウ栽培者の方は、「ブドウにかかっている傘が黒ずんでいるところを見てごらん。」と教えてくれました。すす病自体の防除にはこれといった特効薬はなく、「原色 果樹病害虫百科3」には、病気を誘発する媒介昆虫(クワコナカイガラムシなど)を駆除するしかないと書いてあります(5)。
まとめると、クワコナカイガラムシは直接的・間接的な害をブドウ樹に与えるということになります。しかし、実はこの害虫、ブドウ栽培にとっては
もっと甚大な被害を招く要因になっているのです!
次回、「クワコナカイガラムシ その2」で、その全貌が明らかに!
参考文献:
(1)wikipedia「カイガラムシ」
(2)wikipedia「ダンゴムシ」
(3)wikipedia「ワラジムシ」
(4)農林水産技術情報協会:http://www.afftis.or.jp/index.html
(5)矢野龍,1987,「原色 果樹病害虫百科 3 ブドウ・クリ・ビワ」, 農文協